障害年金における社会的治癒とは

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 江口潤

最終更新日:2024年08月23日

1 初診日の重要性

 初診日において、国民年金に加入していたか厚生年金に加入していたかどうかで受給できる障害年金の種類が決まることになります。

 また、障害年金が受給できるかどうかを左右する保険料の納付要件についても初診日を基準に決めることになります。

 そのため、初診日がいつかは障害年金において非常に重要です。

 そして、社会的治癒は、初診日に障害年金を受給できる要件を満たさない等の場合に、別の初診日を主張するために用いられる概念になります。

2 社会的治癒とは

 社会的治癒とは、ある傷病が医学的には治癒に至っていない場合でも、治療の必要がなくなって社会復帰している場合には、社会保障制度の行政運用の面から、治癒と同様の状態とみなす取扱いです。

 そのため、社会的治癒が認められると、医療機関を受診していない期間の前後で別傷病と扱われることになるので、「後ろの傷病について初めて診療を受けた日」が初診日になるのです。

 これにより、医療機関を受診していない期間の前の初診日が、カルテの破棄等により確認できなかったとしても、社会的治癒が成立すると、医療機関を受診していない期間の後の初診日を証明する書類があれば障害年金の申請ができます。

 また、医療機関を受診していない期間の前の初診日において納付要件を満たさなかったとしても、社会的治癒が成立すると、医療機関を受診していない期間の後の初診日において納付要件を満たせば障害年金を請求できます。

 医療機関を受診していない期間の前の初診日では障害基礎年金の申請になるが、社会的治癒が成立すると、医療機関を受診していない期間の後の初診日では障害厚生年金の申請ができる場合があります。

 障害厚生年金の申請の場合、医療機関を受診していない期間の後の初診日の方が、障害厚生年金の金額が高くなるという効果を得ることもできます。

3 社会的治癒を主張するためには

 社会的治癒については、原則として請求権者の側から主張していく必要があります。

 具体的には、一定の期間通院していなかったことや、検査の数値が正常の範囲にあること、通常の日常生活及び社会生活を送っていたこと等を主張していくことになります。

 詳しくは、専門家にご相談ください。

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